形而下と形而上

松岡教授:デザイナーの仕事の多くは、最終的に「形」にすること。だからといって「形而下」的になってはいけないって僕は思うんだ。

猫:形而下的って?

教授:何でも「見える」ものに依存するっていうのかな。ただ見てくれが美しいってだけで作るのじゃダメなんだ。「形而上」的であることも大事なんだよ。

猫:ん? 形而上的?

教授:見えてなくても、本質的なことをつかんでいるっていうことかなぁ。
モノを作るとき、これがどんな意味を持っているか、そういうことも考えて創造するっていうか。だから、デザイナーは 自分なりに哲学とか思想をもってデザインをしてほしいな。そう思っているんだ。

ドイツ、雨上がりのアーヘン。

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女心とデータドリブン

これまで、多くの企業や研究者たちは、「モデルドリブン」、つまり理論やメカニズムで物事を考えてきていたんだね。でも、AIやビッグデータの時代が到来し、実業面ではこれから「データドリブン」――データに基づいてアクションしていくこと、も求められているみたいなんだ。理屈や法則にとらわれていないで、ともかく目の前のデータを取り入れて素早く行動して行こうって。それはまさに、女心と一緒。新しいものに惹かれる気持ち、そのときどきの移り気な気持ちって、よく女心にたとえられるけど、いいなと思う方へ躊躇せず進んでいくスタンスは、デザイン科学の世界でもアリなんだって、松岡教授はつぶやいてたよ。

四万温泉近くの川の流れ。

AIは宇宙人

人間はAIのことを、どこか不安に思ってるみたいだね。それは、人間とAIの間に共通しているコンテクストがないからなんじゃないかって松岡教授は話してたよ。AIは宇宙人と同じで、何を考えているかがわからない。だから人間は、AIに対して何とも言えない抵抗感や怖れを感じるし、心配が尽きないんじゃないかな。それなら、コンテクストを積み上げていけばいい。概念や価値観を蓄積していって、ハイコンテクストな状況に近づいていけば、きっとAIと共に楽しく生きていけるんじゃないかな。

ギリシャ、クレタ島のイラクリオン古代博物館。

「令和」の時代に

皇居、乾通りの桜。

新しい元号が、初めて日本の古典から取り入れられたね。松岡教授は今、モノづくりにおける「日本人の精神的遺産」の価値について、しみじみ思うんだ。

日本のモノづくりは、「極めるマインド」っていうのかな、細かいところにこだわってより良いものを作りだす、そういう姿勢で進化してきたんじゃないかな。たとえば戦後、車や家電の多くは、多機能、コンパクト、低価格、そういうことをどんどん突き詰めて、産業が発展してきたんだよね。こういう、モノづくりにおける細かさや注意深さ、丁寧さって、まるで箱根の寄せ木細工のようじゃない? いろいろな既存の材料を上手に組み合わせて素敵なものを作り出す…。たおやかさ、しなやかさ、柔軟性。そういう日本人の精神的価値を、これからも産業のありように持っていけたらいいな。この新しい時代の幕開けに、改めてそう思う松岡教授なんだ。

二つのモチベーション

仕事や勉強、スポーツなど、物事を達成するために欠かせない「モチベーション」。周りからの評価、記録更新、合格、昇進など、わかりやすい「外的な」モチベーションがあると人間ってやる気がアップするみたいだね。

でも、それだけでは足りないんじゃないかなって松岡教授は言ってたよ。「内的な」モチベーション、たとえば興味や好奇心、内側から自然にわいてくる動機っていうのかな。自分自身の「やりがい」や「やってて楽しい」と感じる気持ち、人によっては使命感とか正義感…そういうモチベーションも必要なんじゃないかなって。それに、誰から言われたわけではなく自分の意思でやるぞと思ってやる…だからこそ、自分のチカラでできたっていう喜びも強く感じることができるのかもしれないなぁ。

熱気溢れるバンコクの夜。

卒業、おめでとう

新・社会人になるキミたちへ。新しい世界でも頑張れ、期待してるぞって、きっと今さんざん励ましの言葉を贈られていると思うけれど。松岡教授はあえて「そんなに頑張らなくてもいいんだよ」って言うんだ。だって、社会って楽しいことばかりじゃない。ツラいことや悔しいこと、理不尽なこともあるかもしれない。そんなとき、状況を変えようと真っ向から立ち向かうと、逆にポキッと折れちゃうことがあるんだ。体や心の限界を超えてしまって、糸がプツリと切れてしまったり。だから、そんなにあせらなくてもいいんだよ。頑張らなくちゃいけないって自分を追い詰めないでほしいんだ。

人生は長い。キミはまだ、そのスタート地点に立ったばかりなんだ。もしいつか辛いことがあったら、このことを思い出してほしい。ときにはちょっと立ち止まってもいいんだ。そして忘れないで。いつだってキミはひとりじゃないよ。

卒業、おめでとう!

クロアチア、ドブロブニクの空。

ロシアの色

モスクワにある、聖ワシリイ大聖堂。

厳寒のロシアを旅した松岡教授。雪に覆われどこもかしこも薄暗く、気持ちまで凍えそうな冬空の下、目が覚めるほど鮮やかな「色」の力に心揺さぶられたんだって。

モスクワ「赤の広場」にある「聖ワシリイ大聖堂」、そしてサンクトペテルブルクにある「血の上の救世主教会」。陰鬱な気分を跳ね飛ばす明るい原色やまばゆいゴールドがふんだんに使われ、玉ねぎのような屋根やモザイク画に彩られた壁面が伝統的なロシア様式を体現しているんだ。ロシアではほとんどの地域が一年の半分以上は雪景色だっていう。だからこそ、暗い北空に映える鮮やかな「色」を多用した建築物が建てられたのかもしれないね。

サンクトペテルブルクの「血の上の救世主教会」。
モザイク画が絢爛豪華な「血の上の救世主教会」内部。